東京都美術館で開催中の「ルーブル美術館展」には、フランス宮廷の中で実際に使われていたインテリアや小物が数多く展示されている。
装飾的に作られた実用品というのは、実際にそれを使うというところに目的があるので、見栄えの他に機能的な美しさがある。作り手にとっても、いかに見た目を良くしつつ、使い勝手も良くするかということを考えるのは楽しい作業だったに違いない。
とにかく、ムダなまでに豪華な物ばかりが勢ぞろいしていて、そのスケールに圧倒される。
実用品とはいえ、たとえば「ボンボン(お菓子)入れ」を一つとっても、そこには気が遠くなるほど膨大な手間がかかっていて、この壮大なムダがどれだけ出来るかということが余裕の証しだったのだろうと思う。
特に良かったのは、中国の磁器や、日本の陶器に、金細工をほどこした壷。東洋と西洋が見事に合わさって、その両方の特徴が活かされている、不思議な壷だった。
それと、嗅ぎ煙草入れ。小型のオルゴールぐらいの大きさの箱に、絵を描いたり、宝石をちりばめたり、箱によってまったく違う、個性的な装飾がほどこされている。おそらく、こういう特注の「自分用嗅ぎ煙草入れ」を持つことがステータスになっていて、今でいうと、携帯電話にキラキラしたシールを貼ったりしてオリジナルの携帯にするような感覚なのかもしれない。
展示品中、最も好きだったのは、マリー・アントワネットが使っていた、携帯用旅行カバンだった。
マリー・アントワネットという人は、絵よりもインテリアや装飾に興味があった人のようで、身の回りの物にはすべてイニシャルの「M・A」の文字を入れて特注するぐらい、こだわりのある人だったらしい。
その彼女が旅行に出かける時に必要な道具一式をそろえたカバンなので、これはスゴい。すべて、どこに何を入れる、という定位置がカバンの中で決まっていて、当然、全アイテムに「M・A」の文字が刻印されている。歴史上の数々の王妃の中で、マリー・アントワネットが人々の記憶に強く残っているのは、悲劇的な最期のほかにも、こういう、優雅なセンスをもった人という印象があったからだろうと思う。
■ルーブル美術館展
http://www.tobikan.jp/museum/louvre.html
場所:東京都美術館(上野公園内)
期間:2008年4月6日(日)まで
休室日:毎週月曜日
開室時間:午前9時から午後5時まで(入場は午後4時30分まで)