19世紀末、パリのアトリエに集まる、4人の画家の交流を描いた作品。別の角度から観れば、3人の天才と1人の凡才の心理戦を描いた作品とも言える。
無邪気でわがままで子供のようなゴッホ、嫉妬深くて素直に気持ちを表現出来ないスーラ、荒っぽいけれども面倒見のいいゴーギャン、常識的で気さくな人柄のシュフネッケル。4人の性格はそれぞれ個性的で、その点においては優劣はないけれども、しかし天賦の才という点では、残酷なことに明白な差があった。
4人の芸術家は、友人であると同時にライバルでもある。
いずれの画家も、今の段階では世の中において何も認められておらず、無名の存在であるという点では変わりはない。それゆえに、表面上は友情が保たれてはいるけれども、お互いの画家としての実力を推し量りながら共に絵を描く4人の心中には、画家として一足先に有名になりたいという微妙な競争心が常に渦巻いている。
そこに一人の女性モデルが入ってきたことによって、ついにその均衡は崩れてしまう。
モーツァルトと対比させて、天才になれなかったサリエリの嘆きを表現した「アマデウス」も素晴らしかったけれど、この「コンフィダント」では、実在した4人の画家を組み合わせることによって、より奥行きをもたせて凡人の苦悩を描き出した。女性モデルという、画家からは一歩引いた客観的な視点を語り部として物語が語られるという点もいい。本当に見事な脚本だった。
このDVDの映像は、PARCO劇場で観客を一切入れずに撮影したらしい。その理由は、カメラの位置を自由に動かして撮影をして、映像的に臨場感を出したかったためらしく、その効果は抜群で、素晴らしい映像だった。固定カメラから映して撮った映像は決して生の舞台を超えることは出来ないけれど、このDVDは舞台でもない映画でもない、独特な表現を実現している。
【名言】
「一生のうち結局、1枚しか絵は売れなかったの。10万フランには程遠かったけどね。彼の名前が世間に知られるようになったのは、あの人が死んで10年以上たってからだった。」
「いずれにせよ、われわれは罪深い人間だということだ。
罪深きは芸術家だね。」
「でも皮肉なもんだなあ。
ここには、モデルと3人の画家。オレはいない。」
■コンフィダント・絆
http://www.parco-play.com/web/play/les/
キャスト:中井貴一、寺脇康文、相島一之、堀内敬子、生瀬勝久
作・演出:三谷幸喜