渋谷のイメージフォーラムで単館上映している、ドイツ映画。
ジャンルとしてはドキュメンタリーで、食べ物を作るあらゆる現場をひたすら撮り続けている。ナレーションすらまったく入らないので、この作品には意見の主張はまったくなく、ただ、観客が観たそのままを感じるタイプの映画になっている。
この作品が被写体としている共通しているのは、食料を大量生産している現場、それも「原料」に非常に近い場所にフォーカスして撮っているということだ。
それは、野菜であれば大規模農園になるし、動物であれば食肉加工場ということになる。食料を大量生産している現場というのは、それが何を扱っていたとしても、工場と呼ぶにふさわしい。
ヒヨコはテニスボールのように機械から投げ出されるし、豚や鳥はベルトコンベアに乗せられて単調に部分ごとに切り分けられていく。
対象がどんなものであっても、機械を使ってオートメーション化してしまう人間の頭の良さというか、横着さにはびっくりしてしまう。これは、動物を徹底してモノとして見なさないことには到底作れないシステムだと思った。
しかし、この映画が語っているのは、残酷とか無慈悲とか人工的とかそういうことではなく、ただ、現実としてこういう光景は地上のどこかで毎日繰り広げられていて、その結果として数多くの食べ物が食卓の上に並んでいるという、その事実なのだ。
一つのカットが意味なくだらーっと続いて、「長いよ!」と突っ込みたくなるようなところもあり、テンポは非常に悪いので、その点は忍耐力と持久力が必要。
一切の解説無しのため、何をやっているところなのかまったくわからないカットもあるけれど、この思い切った割り切り感はいい。
もともとの原題は「OUR DAILY BREAD」だったところが、邦題では「いのちの食べかた」になっている。おそらく森達也氏の同名の著書に合わせたものなのだろうけれど、内容的にはまったく違うものであるし、このタイトルと内容もズレているので、原題そのままのほうがこの作品にはふさわしいと思う。
■いのちの食べかた(映画)
公式サイト
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/
渋谷イメージフォーラム上映時間
~3/28(金)(11:00/13:00/15:00/17:00/19:00)
3/29(土)~(11:00/21:00)
■「いのちの食べかた」読後の芝浦食肉市場見学記
https://suishodo.net/archives/2007/12/post_280.html