終末のフール(伊坂幸太郎/集英社)
いつか来る死を意識するからこそ、人は、残りの人生を有意義に生きようと思うのだろう。でも、みんなが一斉に死を意識してしまったら、社会はなりたたなくなってしまうかも知れない。
みんなが、今日はまだ自分は死なないだろうと思って、きっと明日も死なないだろうと思っているからこそ、将来に向けて勉強をしたり、貯蓄をしたり、就職活動をしたり、いろいろな計画を立てたりして、世の中はまわっている。
重要なのは、あとほんのわずかな余命だとわかってしまった時に、はたしてどう行動するのか、ということだ。
そこにこそ、その人の本当の人生観は現れるのだろうと思う。
それでも、変わらずに今やっていることを続けるだろうと思えるのであれば、それは、今、いい人生を生きているという証なのだという気がする。
「終末のフール」は、もし、地球があと3年で滅亡してしまうとしたら、という古典的テーマにもとづいて構成された8本の短編のオムニバス。それぞれの短編は、ゆるやかに微妙なところでお互いにつながりあっていて、伊坂幸太郎らしいトリックがちりばめられた作りになっている。
地球の滅亡を目前にして、果たしてこういう行動をとるものだろうか?という違和感があって、あまり登場人物に共感出来る話しは多くなかったけれど、そこはフィクションとして考えれば、ほのぼのとした後味の良い内容ばかりだった。
【名言】
どっちも正解。どうしたら子供のためになるのか一生懸命に考えて、決めたなら、それはそれで正しいと思うんだよねえ、わたしは。外から見てる人はいろんなこと言えるけどね、考えて決めた人が一番、偉いんだから。(p.246)
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