おいしい関係


おいしい関係 全10巻(槇村さとる/集英社)

最高に良かった。

「Real Clothes」を読んだ時も感心したけれど、槇村さとるという人は、働く女性の物語を描くのがとても上手い。レストランでの仕事を通じて、様々な人々と接しながら、主人公が成長していく姿を、ものすごく丁寧に描いている。

絵も好きだし、何といってもセリフが素晴らしい。それぞれのキャラクターの個性と哲学がにじみ出ている言葉ばかりで、こういう作品は、読んでいて本当に面白い。何度も繰り返して読み直したいと思う、殿堂入りのタイトルだ。

【名言】
 
毎日びっくりすることばかりだけど、
今日はホントに驚いた。
あの人が笑うと私が嬉しい・・なんて・・(2巻p.159)

「グレープフルーツを食べたい」という”思い”は一体どこからやってくるんだろう。
宇宙の彼方から降ってきて、突然私の中に生まれる”思い”
「好き」っていう思いはどこからくるんだろう。
哲学、って、人が人を好きになるから生まれた学問だわきっと。(3巻p.142)

 

迷って選べないということは結局、その時点で死んでしまったも同然だ。
人間若くて傲慢な時はまるで自分には永遠の時間が許されているように感じるものだが、本当にそうかな。(3巻p.242)

必ず・・一人前のコックになります。織田さんへの恩返しはそれしかないと思ってます。(3巻p.294)

きっとあの娘は質のいい愛情を浴びるように注がれて育ったんだよ。
だから人に幸福を見せてあげられるんだ。(4巻p.96)

 

自分一人で幸福になれる、か。
それがおまえの最大の武器だよ。
そして致命的だ。
おまえと関わりたい、おまえを助けたい、見守り続けたい。
だが、そりゃあ、ばばあの狂おしい夢だ。実現しない夢だ。
ばばあも一人、おまえも一人だ。(5巻p.205)

織田さんが教えようとするのは技術だけ
私がギャアギャア言うのはハートのことだけ
ずっとずっと一方通行同士
たった一瞬、別れぎわ、触った気がした
1年も時間をおいて、また今日、ちょっと触った
伝わってた(6巻p.268)

 

料理しかない
私が人と関わっていくのに持ってる方法は
料理しかない!(6巻p.118)

嬉しい
どんな体当たりしても大丈夫なすごい目標が
私の周りには、すぐそばにはこんなにいる(7巻p.168)

ねえ自分のこと「バカらしい」って言えるのすごいよね
そういう瞬間って、私、大好きなんだ
「あたしってちっちゃいなァ」って骨身にしみて思える時
実はひとつ大きくなってるっていうの?(7巻p.188)

 

織田さんは千代ばあに、私は織田さんに・・恩がある
こういうつながりを何て言うのかわからないけれど、
どんな現実のつながりよりも、どんな本当のことよりも
私の中ではリアルで、大切なものだ・・(7巻p.252)

大きくやればやる程、味がおちるのが料理の本質だ
料理は金を生むための商品じゃない
1人の人間から1人の人間へ手をかけて差し上げる心だ(7巻p.307)

 

百恵・・明日なんて、だれにあってだれにないのかわかりやしない
皆が等しく持っているのは「今」だけだ
自分を殺すな、自分を活かせ
それが、今を生きるということだ(8巻p.242)

だれも傷つかないって訳にはいかない
でもそれが生きて行くってことだよね(8巻p.263)

 

こわくなんかないわ
あんたたちのことはよく知ってる
いつだって私も一緒にいたものね(9巻p.18)

もし千代ばあが私のために長生きしてたり、
もし高橋さんが私のために毎日頑張ってるとか言ったら
そんなだったら私はみんなを尊敬したりしないだろうし
嬉しくも何ともない!
みんな自分の夢を無我夢中で追いかけてる
それが幸せそうで、素敵で、ひかれちゃうんだもの・・(9巻p.84)

下品です!
うわついて、自分の「任」に合わない夢を見るという下品
それを他人のお金で手に入れてしまおうという下品(9巻p.126)

成功なんて、素質、才能、努力と運、人との出会い方、志のもち方、姿勢、色んな要素の結果でしかない
百恵は「成功という結果」を目指す訳じゃない
夢にとびこむ気でいるだけだ
やりたいからやっていく、と言うんだろ?
それなら少なくとも「失敗」は無いさ
失敗さえ次のヒントでしかないから・・(10巻p.303)