絶対貧困


絶対貧困(石井光太/光文社)

かなり素晴らしい本だった。
TV番組や映画や公共広告で報道されているような形での、発展途上国のスラムやストリートチルドレンの紹介ではなく、実際に、本当に現地でギリギリの貧困生活を送っている人々の中に入って共に生活をして、そこでの生活者の目線で書かれているノンフィクションだけが持つリアリティがあった。
この本が素晴らしいと思うのは、出来るかぎり正確にわかりやすく、世界の「絶対貧困」の生活がどういうものかということを伝えようとしているという点だ。世界には、一日の平均収入が1ドル以下の人が18億人、2ドル以下では30億人いるという。もはや世界の総人口の半分を占めているというのに、それが具体的にどういう暮らしなのかというのは、メディアから与えられる情報だけしかほとんど知ってはいない。この本では、「貧困学」という講座の形態をとって、写真や図版を多く交えながら、かなり客観的に、克明にその現場の状況を解説している。
思いっきり悲惨な実態も書かれているけれど、思いっきり笑えるエピソードも色々書かれている。スラムの話しで可笑しいという表現は似つかわしくないと思われるかも知れないけれど、そこにも人間が暮らす以上は喜怒哀楽があるのは当然で、その悲惨な面のみをクローズアップしている報道とは一線を画しているところも、また良い点だと思った。
今まで、発展途上国について刷り込まれていたイメージの多くの部分が、この本によって、大幅に更新されることになった。こういう本を書くということは、本当に尊い仕事だと思う。
【名言】
現地にいると、そこに多くの笑顔があったりします。しかし、だからといって、それが「安全」というわけではないのです。きつい言い方をすれば、それは「自然淘汰」に勝ち残った者たちの笑顔にすぎないのです。私たちはテレビ番組に映し出される「笑顔で必死に生きる貧しい子供」を見てほっとしますが、番組にならない所では何倍もの死が横たわっていることもあるのです。(p.44)
路上生活者たちの中では、女性の分娩がはじまってしまったら、その場にいる男たちが協力して病院へ運ぶというのが約束事になっているのです。むろん、これは出産だけではありません。病気や事故があれば、その場にいる全員が仕事も何もかもほっぽりだして助けに駆けつけるのです。こうした人情が路上生活者の切羽詰ったギリギリの生活をかろうじて支えていると言えるのです。(p.115)
「町の路上にいたって、誰からも相手にされずに死んでいくだけじゃないか。だけど、軍隊にいればみんな僕のことを必要としてくれるだろ。働けば働くだけほめてもらえる。偉くなることだってできる。だから自分の意思で加わったんだよ」(p.191)
通常、大学などで途上国の貧困を研究したいと思った時、国際関係学の一分野である国際開発論を勉強することになります。あるいは、国際経済学だとか、国際社会学といった領域からその道に入る方もいらっしゃるでしょう。ただ、実際に貧困地域に暮らす人々が、かならずしもそうした最大公約数的な問題や理論に当てはまるとは限りません。彼らが日常的に直面し、重要だと思っているのは、もっと小さく細かいことなのです。(p.282)

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