「加速力」で成功をつかめ!(齋藤孝/草思社)
本を読む時には、その人の感覚が、自分自身と似ているかどうかということは、とても重要な要素だと思う。感覚や価値観が違う人の本を読むことも勉強になることはあるけれども、読んでいてどうも腑に落ちない話しというのは、読み進もうというモチベーション自体があまり上がらない。誰がぴったりハマるかというのは、人によって異なるので、それが、人に本を薦める時の難しさでもある。
自分にとっては、齋藤孝さんは、かなり感覚がぴったりとハマる人だ。
どの著作を読んでも、「なるほど!」と感心することばかりで、自分が普段ぼんやりと考えていることを、明確に言語化してくれているようなスッキリ感がある。
多作の人でもあるので、毎月のように新刊が出て、それを読むのがとても楽しみだ。最近出たこの本も、新しい気づきに満ちていた。この世にはまだまだ、出あっていない、自分にぴったりとハマる感覚を持った人がいるはずだけれども、少なくとも、齋藤孝さんという人の著書に巡りあえたことは、大きな幸運だ。
【名言】
じつは私も、かつては量をこなすと質が落ちるという考えにとらわれていた時期がある。だがあるときから、こうした考え方を捨てた。私が尊敬する思想家が、軒並み異常な量の仕事をこなしていることに気づいたからだ。(p.70)
依頼された仕事はけっして断らない。これは若いころの私のモットーだったが、もう一つ、実践していたことがある。納期を通常の三分の一以下にするということだ。簡単にいえば、前倒しで仕事を終わらせていたのである。「三分の一」という数字自体にはさして意味があるわけではない。しかし、たとえば五分の四ぐらいの納期では誰も驚いてくれない。その点、半分以下なら間違いなく目立つ。納期一ヶ月のところを三週間程度で納めても、「ああ、早いね」ぐらいで終わるだろう。しかし二週間以下で納めれば驚かれるはずだ。たんにがんばっているという思わせるだけでは足りない。加速を印象づけるには、相手を驚かせなければならないのである。こういう加速は、目に見えやすい分、他の人にも伝わりやすい。この人は加速しているなと思えば、一緒についていきたいとか、バックアップしたいと思う人も現れるものである。(p.98)
「通る企画書」にするためには、タイトルや概要だけでなく、細かいところまで書くことだ。具体的な内容まで書いてあると、「この企画はもう動き出している」という印象を読む者に与える。そうなればしめたもので、実際に動くようになる。不十分なところは、動きながら加えたり修正していけばいい。逆にいえば、タイトルだけだったり、2~3個のアイデアが書いてあるだけでは、企画倒れになりやすいということだ。建築でいえば基礎や鉄骨まで建ててしまう。場合によっては畳まで持ってきている、といった勢いで書くのがポイントだ。書き出す小項目は、一日で一気に書いたほうがいい。思い付きを文章化するぐらいの気持ちで、スピード感を大事にする。外で飲んでいる時に思いついたら、家に帰ったらその日のうちに書き上げる。そのときは気持ちが盛り上がっているから、いくらでも出てくる。「止めたくても止まらない」状態に入りやすいのだ。(p.141)
何かを始めるとき、できると確信を持って臨むのと、できるか否か不安を抱いて臨むのとでは、結果がまるで違ってくるということだ。とりわけリーダーと呼ばれる立場の人間にとって、この差は重要だ。リーダーの資質とは、突き詰めれば「なんとしてでもやる」という覚悟を見せることだけだ。細かいプラン等はメンバーが考えればいい。絶対に成功する、やり遂げるまでは終わらせないという自信と決意の発露がプロジェクトを引っ張っていく。その覚悟がなければ、プロジェクトは成功しないのである。(p.152)