ホーキング、未来を語る


ホーキング、未来を語る(スティーヴン・ホーキング/アーティストハウス)

この本は、語られている内容は難しいけれど、説明の仕方はユーモアにあふれていてわかりやすく、とても親切だった。文章だけではなく、CGによる美しい絵が多用されているという点もいい。
このCGは、あまりあっても意味がないものも多く、文章との対応もわかりづらいこともあるのだけれど、それでも、この挿絵のおかげで随分と、語られている世界観の理解はしやすかった。
テーマは一つに絞られているわけではなく、ホーキング氏が研究している最新の宇宙理論に関連した内容全般ついてで、かなり多岐にわたっている。タイムマシンの可能性についてや、ブレーン世界についての話しなど、テーマの選択自体が、とても面白いものばかりで、しかもそれが最終的に一つの流れにまとまっていくというのは、見事な構成だ。
原著は2001年に出版されたものなので、今やちょっと古くなってしまっている内容もあると思うのだけれど、最新理論の解説書として、かなり優れた内容と思う。この、キレイな挿絵を見るだけでも、充分にワクワクさせられる本だった。
【名言】
ある時空領域における量子状態についての情報は、その領域を囲む二次元境界面の上にコード化されて書かれているかもしれません。これはホログラムが、三次元の立体像を二次元平面の上に載せる方法と似ています。量子重力理論がホログラフィ原理を組み込むならば、ブラックホール内部がどうであるかを、地平面ができた後も追跡しつづけることができるのを意味します。(p.79)
いたるところに正エネルギー密度がある状況ではタイムマシンは不可能です。有限の大きさのタイムマシンを造るには、負エネルギーが必要だということを証明することができます。
古典理論ではエネルギー密度は常に正であり、そのため有限サイズのタイムマシンはこの段階で除外されます。ところが半古典理論では状況が異なります。量子論での不確定性原理によると、明らかに中に何もない空間においてさえ、場は常にゆらいでおり無限のエネルギー密度をもつことになっています。したがって、私たちが宇宙で観測する有限エネルギー密度を得るためには、無限量を差し引くことをしなければならないのです。この差し引きは少なくとも局所的にしろ、負のエネルギー密度を残すことができるでしょう。(p.165)
私たちが望む望まないにかかわらず、いずれヒトの遺伝子工学は始まるだろうと思います。人類とそのDNAは、急激に複雑さを増していくと私は考えています。それが起こりそうであると認めてから、私たちはどう扱うつもりであるかを考えるべきです。(p.187)