駅から5分(くらもちふさこ)


駅から5分(くらもちふさこ/集英社)

※2008年10月現在、2巻まで発売
くらもちふさこの絵は、独特な品があっていい。絵柄は全然違うけれど、荒木飛呂彦のようなオーラを感じる。
各話が独立したオムニバス形式なのだけれど、それぞれの話しで完結していながら、お互いの話しが有機的に結合している。こういう構成は大好きだ。
舞台が学校ではなく、一つの小さな町全体というところが面白い。クラスや部活の中に閉じた世界ではないから、老若男女様々な種類の人が関わり合って、ドラマが生まれていく。この立体的なクロス・オーバーは、昔に見た「ツインピークス」を思い出させる。
ある一つの場面に5人の人が居合わせたとすれば、そこには当然、5通りの物語がある。同じ出来事でも、誰の視点から見るかによって、その解釈は大きく変わってくる。そして、同じ人物でも、関わり合う相手との関係によって、その性質は変化する。
この、出会いによって生まれる多様性と偶発性こそが日々の面白さであって、この作品は、その面白さを花染町という小世界の中に凝縮して、見事に表現していると思う。
こういう、一話完結型の作品というのは、巻が進んでも面白さは変わらないか、だんだん衰えていくことが多いのだけれど、この「駅から5分」は、回を重ねるごとに倍々ゲームのようにどんどんと面白さを増していく。巻末についている、人物相関図がどんどん埋まっていくのが楽しい。
駅から5分(3巻)