ロストハウス

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ロストハウス(大島弓子/角川書店)

短編集で、収められているのは、「青い 固い 渋い」「8月に生まれる子供」「ロスト ハウス」「クレイジー ガーデン」の4編。いずれも不思議なマンガだ。
日常生活を描いているのだけれど、どの作品の主人公も微妙に周りとズレている。しかし、独特の世界を持っていて、芯があって、傷つきやすく、とても強くて脆い。
この作品から教えてもらったのは、人それぞれに許されている生き方というのはとてつもなく自由だということと、たとえどれほど逸脱をしたとしても、それが落ち着く先の場所は必ずある、ということだった。
現実世界の生きにくさがひしひしと伝わってくるような話しばかりなのだけれど、最後には、その閉塞から救い出されるような解放感がある。こういう、大島弓子のセンスは天才的だと思う。
【名言】
わたしはこの世にたったひとつ好きなものがある。
他人の散らかった部屋である。(p.100)
わたしはなんの趣味も特技も人生の目的もない。
ただ、小さな解放区さえあれば、あとはロボットみたいに生きていけると思っていた。(p.126)
「ああ、彼はついに全世界を部屋にして、そしてそのドアを開け放ったのだ」(p.137)
僕はほんとは、あんたがホントの大学だったと言いたかった。(p.218)