サクサク現代史!


サクサク現代史!(青木裕司×片山まさゆき/メディアファクトリー)

河合塾の世界史講師である青木裕司氏の講義を、片山まさゆき氏がマンガ化したという、夢のコラボレーション。現代史についてわかりやすくまとめた解説も面白いし、それを物語風にしたマンガが最高にいい。
世界を一つの教室にたとえて、「アメリカくん」や「イスラエルくん」など、それぞれの特徴を見事にとらえた登場人物同士が、クラスの中でケンカをしたり、番長同士で同盟を組んだりする。
こうやって単純化して見せられれば確かに、近現代での国家間の争いは高校生のケンカみたいなものだ。色々な環境から個性的な生徒が集まって、近くにいる人と席を取り合ったり、気が合う連中で仲間になったりしている感じに近い。
片山まさゆき氏といえば、麻雀マンガの印象が強いけれど、三国志のマンガや、ソ連のチェルネンコを主人公にしたマンガも書いていたりで、歴史系の作品も過去にいくつかある。それぞれの国が持つキャラクターを的確にとらえて、単純な絵でユーモラスに表現する才能は素晴らしい。
世界史は、相当面白い教科であるにもかかわらず、教科書の無味乾燥な書き方では、その魅力は8割方失われてしまう。この本は、その面白さを8割増しで伝えている、かなり価値のある本だ。そして、入口で面白いと思えれば、それをきっかけに、どんどんと興味は湧いてくるものだと思う。これは、学生にも社会人にもおススメ出来る。
【名言】
イスラエルはイェルサレムを首都と主張しているが、これは国際的には認められていない。1947年の国連パレスチナ分割案でも、イェルサレムは「国際管理地域」とされていた。ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教のそれぞれにとって、イェルサレムは「聖地」であり、一つの国が支配下に置くのは好ましくない、との判断からであった。(p.44)
レジスタンスがいた一方、ドイツ軍に積極的に協力するフランス人にいた。彼らのことを「対独協力者(コラボレ)」という。戦後、多くのフランス人が問われた質問が「貴方は1940年に何をしていたか?」。ドイツ軍と戦っていたら英雄、コラボレとわかればリンチにあった。(p.89)
アメリカがベトナムで戦ったのは、約8年間。1日平均300億円かかったという。それを約3000日やった。てことは、90兆円。(p.124)
第二次世界大戦以降、戦争をしなかった国は、まず日本ですよね。日本以外にあるんですか?
アフリカ大陸にはありません。アジアではブータン。南北アメリカではジャマイカだけ。(p.178)