歌舞伎というものを初めて観た。
こんなにも面白いものだとは思わなかった。
やっていた演目は、
『源平布引滝』の中の「義賢最期」「竹生島遊覧」「実盛物語」と、『枕獅子』で、
『源平布引滝』は市川海老蔵が主役をつとめていた。
驚いたのは、スタントのような派手なアクションが盛り込まれていることだった。薄く立てた2枚のフスマの上に、フスマを横に置き、その上に海老蔵が立った後、そのままフスマが水平に倒れる、という大技は、かなり度肝をぬかれた。
木曽義賢の最期のシーンでも、海老蔵は、仁王立ちのまま、階段の上に前のめりに倒れる。「仏倒れ」という技(?)らしい。プロレス技とちがって、自分自身がダメージをくらう。「こんな危ないことを毎日やっていて、よく怪我しないな!」と思う。
長唄の中にあった、三味線のソロプレイのド派手な演奏にも驚いたし、歌舞伎は、自分が想像していたよりも、ずっとアクロバティックなものだった。
濃紺と金、とか、薄緑とピンク、とか普段見ないような色の組み合わせの衣装が、華やかで素晴らしい。役者たちの声も動きも、とてもキレイでカッコよく、洗練されていて良い。この夢のような空間の中には、宝塚と同じような、ファンタジックな活気がある。
そして、歌舞伎というものは、半分は知識で観るものなのだと思った。
今回、イヤホンガイドで解説を聞きながら観たのだけれど、この解説がなかったら、さっぱりわからないシーンだらけだったので、面白さは1割ぐらいになっていただろうと思う。
部屋の中に行灯が運ばれたら「夜になった」ことを示している、というように、細かい動きの中にも実は意味があるということも、それを知らないとわからない。
これは、深く知れば知るほどに、面白さが増していく芸能なのだと思った。
■新秋九月大歌舞伎
平成20年9月1日(月)~25日(木)
場所:新橋演舞場