海街diary


海街diary 1~3巻(吉田秋生/小学館)

最高によかった。
中心人物が毎回変わっていく、一話完結型のオムニバスで、その構成がまず素晴らしい。それぞれの話しは、ゆるやかに関連を持ちつつも、独立した話しになっている。くらもちふさこの「駅から5分」ともよく似ていて、こういう構成はとても好みだ。
鎌倉を舞台にしていて、稲村ヶ崎や佐助稲荷などの名所がちらほらと登場し、花火や紫陽花やお祭りのような、季節の風物詩と共に描かれるのが、風情があっていい。
吉田秋生の描くマンガは、どれも文学性が高いものばかりだけれど、この作品は、ずば抜けて心理描写が素晴らしいと思う。ちょっとした表情の変化を見せるような場面では、特に描き方が上手い。
「将来の古典になることが約束された作品」と、帯のコピーに書いてあったけれど、これはたしかに、それを多くの人に確信させるだけのクオリティーを持つ作品だと思う。
【名言】
 
降るような蝉の声もかき消すことができないほど
すずちゃんの泣き声は激しかった
この子はこの夏、何度ここで涙を流したんだろう
もう助からないお父さんと、ずっとひとりで向きあってきたんだ(1巻p.59)
「行きます!」(1巻p.67)
 
「君だっていろんなもの棄てて、ここにきたんでしょ?
自分の中のなにかがGOサインを出す、そういう瞬間てあると思わないか?」(2巻p.45)
「真実ってさ、一つじゃないんだよね。
人は信じたいものだけを信じて、見たいものだけを見るのよ。
母にとって最後まで兄だけが自慢できる子供だったように。
別の何かがあるなんて、思いもしないのよね」(2巻p.156)
 
女子寮の一番下っぱ・・か。
確かに姉と妹という感覚とは少し違う。
少なくとも佳乃やチカと同じというわけにはいかない。
それはたぶん、すずも同じなのだろう。(2巻p.165)
迷った時点で、もう答えは出ていたのだろう。
お互いこうなることを。(3巻p.175)