吉本隆明の声と言葉。


吉本隆明の声と言葉。(糸井重里/東京糸井重里事務所)

吉本隆明という人には、著作もたくさんあるけれども、その他に、数多くの講演録のテープが残されているらしい。
それらの講演の中で、特に選り抜きの部分を74分ぶん抜粋して、一枚のCDに収めたのが本書。
それだけではなく、本の最初には、糸井さんと吉本さんの対談が載せられていて、CDに収められた各講演には糸井さんの解説がつけられている。
吉本さんの文章というのは、それ単体だと、難しかったり偏っていたりで、なかなか理解しづらいのだけれど、講演という形で直接その肉声を聴くと、素のキャラクターがにじみ出ていて、文字では伝わってこない部分とあわせて、よくわかる気がする。
そのことを糸井さんは知っていたから、吉本さんという人の思想を最も伝えやすい形として、この本のような形式を柔軟に選択したはずで、その点、やはり企画の天才だと思う。
まえがきで糸井さんは、「今回のこの企画は、吉本さんちの門前でうろうろしていてよかった、と思うぼくが、近くの友だちに向けて手招きしているようなものだとお考えください」と書いているが、まさに、そのような気軽さで、吉本さんの思想の中に入りこんでいける感じだ。この、編集・構成の見事さと発想は、本当に素晴らしい。
【名言】
言葉数は少なくても、みんなきっとお喋りだったんでしょうね。観念と具体がごちゃごちゃになっていたでしょうけど、文字を書く文化がない時代には特に、話していたわけです。(糸井)(p.28)
僕は実感的に、その種のことでぶちのめされたことがあります。それは、兄貴の娘なんです。子宮がんかなにかで亡くなりました。その姪っ子が僕に、「おじさん、この状態というのはどういうことなの?」って聞くんです。僕は、それに答えられないわけですよ。姪も、ある程度自分が危ないということはわかっていました。だけどこの事態というのはどういうことなの、どう考えたらいいの、と本人が聞いたんです。僕は、なにも答えられない。
僕はこれまでいろんなことを偉そうに言ってきたかもしれないけど、そこでなにも答えられないということは、要するにお前の考えはダメだということを意味すると思いました。少しでもいいから、答えがあるみたいだ、ということでもいいから、そういうことをそこで言えなければ嘘だと感じました。(吉本)(p.44)
後にさまざまな経済上の巨人がいますけれども、スミスのような意味合いで、歌を持っていないと思います。経済学が歌を歌うことができなくなってしまったという時代的な傾向もありますし、さまざまな要因はあるんですけど、とにかくスミスのように一種の豊かな優しい歌を歌いながら、経済学の概念を作り上げていくというような人は、スミス以降に求めることはできないな、と思います。(吉本)(p.62)
ソーシャルブックシェルフ「リーブル」の読書日記

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