ポーの一族

ポーの一族 (1)
ポーの一族(萩尾望都/小学館)
バンパネラ(吸血鬼)である、ポーの一族にまつわる物語。
一話一話は、それぞれが独立したオムニバスの形式になっているけれども、登場人物は時代を超えて関係がつながっていて、全体で見ると何世代にもわたる長い物語になっているという、壮大な構成になっている。
主人公のエドガーはバンパネラなので、ずっと14歳から年をとらないまま、18世紀~20世紀のヨーロッパ各地に場を移し物語は展開する。
バンパネラは人の血から生気を吸って生きてゆくために、一つ所に長い間とどまることは出来ず、次々と棲み家を転々と変えていかなければならない。
エドガーは何十年経っても変わらない姿のままなのに、周りの人間達はあっという間に年をとり、はかなく死んでゆき、しかしまた次の世代へと命は引き継がれていく。ある人間と関わりを持ったとしても、それは一瞬の出来事であって、そのすぐ後には必ず別れが訪れてしまう。
人間の心を持ちながら、人間とは違う種族になってしまった彼らバンパネラの寂しさが、どの話しからも伝わってくる。
コマ割りによる動きや感情の表現が巧みで、今から見てもとても斬新な感じで、これが1973年に描かれた作品だとは思えない。
マンガというメディアが今よりもずっと未成熟であった時代に、これほどにスケールの大きい、文学的な作品が生み出されたということに驚かされる。時代を超えて語りつがれる、永遠の名作だと思う。
【名言】
「感情はどこにおいてあるの?同情してるわけでは決してないね?」「みのった麦をかって人間が生命をつなぐなら、われわれは人間をかって生命をつないでいる。ただ、われわれの麦は知恵を持っている。あなどるとこちらがやられる。」(2巻p.74)
「だあれが殺した?クック・ロビン・・ふふ・・」「それはわたし、とスズメがいった。わたしの弓と矢羽で、わたしが殺した、クック・ロビンを。」(3巻p.115)