告白(湊かなえ/双葉社)
最初の章で度肝を抜かれた。これはスゴい。
この、第一章を読んでしまうと、もう誰も途中で止められないだろうと思う。
文章自体は、かなり読みにくくてツラい感じがあったものの、この作品の場合、着想が群を抜いているので、そこは度外視して読み進めることにした。
章によって話者が次々に交代していく構成と、各章のタイトルが良かった。
同じ出来事が、様々な人の視点から語られることで、その立場によってまったく違う意味が生まれるというところが面白い。この、そら恐ろしいまでのすれ違いっぷりは、見ていて切ないものがあるけれど、人の愛憎劇というのはたいがいこの、思惑のすれ違いから起こるのだろうことを考えれば、とても巧みな表現だとも思う。
登場人物の設定や性格についてのリアリティーはあまり感じず、共感出来るところはほとんどなかったのだけれど、この小説はそれを差し引いても余りある、驚きと斬新さがあった。
【名言】
みんなは学園ドラマを見たとき、思ったことはありませんか?熱血先生と問題を起こす生徒、両者は何か事件が起こるたびに深い信頼関係を築いていきます。では、エンドロールに何年何組の生徒としかクレジットされない、その他大勢の立場はどうなるんだろう、って。(p.12)
母を殺されたのなら、私は被害者の身内であり、犯人に対して憎しみの気持ちをぶつければいい。弟が殺人を犯したのなら、私は加害者の身内であり、世間から非難されながらも、弟の更正や被害者への謝罪を考えていかなければならない。
しかし、この二つが合わさった場合はどうすればいいのだろう。(p.106)
白い壁に映し出される映像は、いつもここで終わる。ここに出てくるバカな少年はいったい誰なのだろう。そして、どうして僕はこの少年の気持ちが手に取るようにわかるのだろう。(p.203)