コンスタンティノープルの陥落

コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)
コンスタンティノープルの陥落(塩野七生/新潮社)

コンスタンティノープルという名前は、世界史の授業の中で登場した数々の地名の中でも、ひときわ深く印象に残っている。支配者の変遷と共に、ビザンチウム→コンスタンティノープル→イスタンブール、と何度も名前を変えた都は、その街自体が多くの歴史的事件の生き証人でもある。
1000年以上にもわたる東ローマ帝国(ビザンチン帝国)の精華が凝縮されている、この小さな街は、波乱万丈な歴史を運命づけられている土地なのだと思う。地理的にも、ほんの数百メートルの幅しかない海峡によってアジアとヨーロッパを結ぶ交通の要衝であるこの街は、他にはない独特の魅力を感じさせて、いつかこの目で見てみたいと思っていた街だった。
15世紀当時、コンスタンティノープルを取り囲む三重の城壁は、最強の防御力を誇ると言われていた。
一方、トルコのスルタンの親衛隊であるイェニチェリと、トルコ軍が持つ大砲も、当時最強の攻撃力と言われていて、この二つがぶつかる戦いというだけでも、「最強の矛と最強の盾がぶつかったらどうなるのか?」という興味をひいて、非常にドラマチックだ。
この「コンスタンティノープルの陥落」では、単にその都が陥落した日の戦いについて書いているだけではなく、都の陥落前夜までに起こっていた出来事や、そこにつながるいくつもの伏線から始まり、丁寧に描写がされている。
コンスタンティノープルの陥落は、実に様々な人間の人生をがらりと変えるほどの大事件だった。そこには、当時その場に滞在していた人と同じ数だけのドラマがある。そのことをより鮮明に浮かびあがらせるために、この本では、コンスタンティノープルに関係のあった様々な周辺国家や、いくつかの人物にスポットを当てて説明している。
それらの人々が、ビザンチン帝国とトルコの衝突にどういった立場で関わり、戦いの中に何を見て、陥落の後にどのような人生をたどったか。その、複数からの視点を合わせることで、この一大イベントが見事に立体的に描き出されている。考証の正確さと、物語としての面白さが両立した、優れた歴史書だった。
【名言】
トルコの宮廷を支配する空気が、先のスルタンの時代とはまったくちがうものであるのは明らかだった。自分の主人は、家臣から、愛されるよりも怖れられる君主であろうとしている、とトルサンは思った。それでいて不思議なほど、重臣たちから兵士の端にいたるまで、マホメッドの手足のごとく動くのだ。十五万を超える大軍の移動とは信じられないほど、三度にわたった布陣は支障なく終わった。(p.127)
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